ハードなお話し
濾過のお話し
第1章)
皆さん、充分ご存知でしょうが、濾過には、2通りの意味合いが有ります。

1つは物理濾過で、もう1つは生物濾過です。
どちらもとても重要です。

物理濾過は、プレフィルターとも呼ばれてますが、上部濾過槽で、一番上のウールマットがそれに当たります。
濾過と言えば、ある程度熱帯魚を飼育された方は生物濾過を重視されますが、まず、物理濾過を充実させないといけません。
水槽内での魚の糞や餌の残り、これらの固形物は有機物と言う水の汚染源としてみた場合、非常に負荷が高いもので、これを生物濾過槽に持ち込んでしまうと、固形分を分解するためのバクテリアの負担が高くなり、そして分解しきれずに残る残渣=ヘドロの量が増加します。
したがって、主役である生物濾過槽の負担を軽くするために物理濾過が重要となります。 「フィッシュレット」という、糞採りマシーンがありますが、あの商品もその意味においては有効です。
オーバーフローとかの場合、ウールマットで物理濾過する場合、とにかくギッシリウールを容器に詰めて、糞や餌の滓が生物濾過に行かないようにしないといけません。スカスカの薄いマットでは、余り意味が無いのです。

第2章)
濾過の充填方法ですが、重要なのは濾過の高さではなく、表面積です。
密閉容器の形でポンプで圧送するのであれば、厚みも重要ですが、水槽からの自然落下や大気開放にて濾過する場合はろ材の厚みが厚くなると下の槽では酸素が行きにくくなったり、水の通り道が出来て、生物処理として機能しない部分が発生します。 ろ材の表面積が広いほど、面全体へ水圧が掛かる事で水の通過スピードも緩やかとなりバクテリアと溶解している有機物との接触時間が長くなる分、1回循環あたりの分解レベルも高くなるわけです。
仮に100リットルのろ材が有るとしたら、500長×500奥×400高で充填するよりも、500長×1000奥×200高の充填方法がバクテリアの処理能力としては良いです。

アジアの場合、1匹の成魚に対して25〜40リットルくらいのろ材が適当ですが、濾過の厚みは、ろ材の形状にもよりますが、10センチ〜40センチまでと考えてください。それ以上、厚みを保持してもデメリットが増えるばかりです。

第3章)
生物濾過としてのバクテリアには酸素を分解活動に要する好気性バクテリアと嫌気性バクテリアの2種が居ますが、タンパク質の分解過程においてアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に分解する役目の菌と、亜硝酸性窒素を硝酸性窒素へ分解するバクテリア、ここまでの分解のバトンタッチは好気性バクテリアによるもので。
硝酸性窒素を分解して窒素ガスへ分解したり、タンパク質の炭素源を炭酸ガスとして大気開放する事が出来るのは嫌気性バクテリアの仕事です。

嫌気性バクテリアは大気開放式の濾過槽ではコントロールが困難なので、好気性バクテリア中心の話をしますと、「好気性」という限り酸素を充分に補給してやる必要が有るため、濾過槽へのエアレーションが必要となります。
特に、ろ材の量の多いオーバーフロー方式は魚へのエアレーションは当然として、濾過槽へのエアレーションも必要です。

アンモニア性・亜硝酸性窒素は魚に低濃度で害を及ぼしますが、硝酸性窒素は比較的高濃度まで魚が耐性を有していますので、放置されがちですが、何れの成分も水質テスターにて定期的にチェックされる事をお勧めします。
魚の体調不良や、病原菌の繁殖は濾過のバランスが崩れたときに発生します。

溶けている有機物すら、バクテリアは分解していき、糞やバクテリアの死骸や、分解しきれない残渣は茶褐色の泥のようなヘドロとして濾過槽内に蓄積されますが、このヘドロの中にも多数の有用菌がひしめいていますので、むやみに捨てれば良いと言うわけでは有りませんが、ヘドロが多くなりすぎると、ろ材とろ材の間を埋め尽くしていき、やがて水の通り道を塞いでしまいます。これをろ材の閉塞といい、濾過槽を一気に崩壊させる原因となるので定期的なヘドロ抜きが必要なのです。
ろ材がヘドロで埋って、酸素が行かなくなれば、酸欠となり、腐敗して硫化水素等の有毒物質を嫌気性菌が生成するようになります。
チェックの目安としては、ヘドロ抜きしたときに、そのヘドロが茶褐色を帯びて畑の土のような匂いがしていればOKです。土の匂いは放線菌と言う、ある種の抗生物質を産生する有用バクテリアで、抗生物質のお陰で、病原菌等が発生しにくい、よい環境が出来ている証拠となります。

逆にヘドロ抜きして、そのヘドロが黒くて、卵の腐ったような臭いをしていたら嫌気性菌による硫化水素等の生成を意味するため、早急に濾過槽のヘドロ抜きをする必要が有ります。
水の通り道の確保。大変重要です。 水槽に100リットルのろ材を投入しても、水が充分に廻らなくて死んでるエリアが40%あるとしたら、100リットルの容量を確保しておきながら、ろ材を60リットルしか入れてないのと同様、いえ、それ以下です。嫌気の有毒物の影響を考えれば…。

第4章)
水質チェックのベースとしてpHチェックがあります。
アジアの世界では当り前のチエックとなってますが、pH降下にも、いろいろな原因があります。

1つは硝酸性窒素の濃度が高くなった場合。
バクテリアの繁殖でアンモニアが硝酸性窒素まで分解されるとpHは低下していきますが、pH5以下では、一般的な有用なバクテリアは極端に分解活性が下がるため、本来、pH降下も緩やかになるものです。
これによるpH低下による対策としては水換えによる硝酸塩濃度の希釈です。

また、濾過槽が嫌気に傾いて、硫化水素等が生成した際にも、pHは下がります。
KHが2以下になってもpHは急降下しますので、RO水等を利用する場合も注意が必要です。

要は、pHだけとか、導電率だけとかのチェックではなく、複数項目の水質チェックが必要であると考えてください。 実際、ベテランさんは水質チェックはしません。
魚の調子をみて水換えとかの管理をされます。でも、アジアは耐性の強い魚ですから、案外、絶えているだけかもしれないので、客観的に水を捉えるのには、やはり水質データは重要です。 何か異常が有った際、過去のデータと較べて、何処が異常なのか?チェックの解決が早いでしょう? 誰かに相談に載ってもらうにも、データを伝えるほうが、より正確なアドバイスを貰えると思います。

第5章)
自分の水槽のろ材の量は充分かどうかは、上と重複しますが、やはり、ヘドロの蓄積するスピードが速いかどうかで判断します。

本来高分子である有機物をバクテリアの産生する酵素により低分子化して体内に取り込める大きさにしてるわけで、バクテリアが活性化されてないと、本来分解できるはずのヘドロ分も食べきれずに残ってしまうわけです。
ろ材が汚れ(バクテリアにとっては栄養と表現できます。)の量に対して充分にあると、汚れ量に応じただけのバクテリアしか増えないので、バクテリアは、ろ材全体に散らばっていくので、ろ材の周りに付着するヘドロの厚みもなかなか厚くならないし、ヘドロの層の内側でウマイこと嫌気性菌が仕事をバトンタッチしてくれたりすると、かなりの長期間、濾過槽の底にヘドロが溜まる事無く運転が可能です。

ですから、いくらコマメにヘドロ抜きをしても汚れの量に対してろ材が少ないと遊離するヘドロは次々発生するため、イタチゴッコです。
また、ヘドロ量の増加でpHが5以下になると、バクテリアは活性が下がるので有機物の分解スピードが激減して更に水質悪化スピードは加速されます。

したがって、遊離したヘドロの発生量が多いという事は、そのろ材に付着できる量のバクテリアの総数では処理不足と言う事なので、ろ材不足だと判断して、濾過槽のボアアップを検討しなくてはいけません。
エアレーションの強化でバクテリアを活性化させることで、ある程度のヘドロ量なら減らす事も可能です。

最初の頃は、ヘドロも出なかったし、pH低下も少なかったのに、最近多いと言う方は、濾過槽のボアアップが第1の改善策です。 飼育してたアジアや同居魚が大きくなって、水の汚れの量が増えてきたと判断しましょう。

第6章)
濾過槽への通水量や曝気量の限界も考えましょう。
本来、通過水量は水中の酸素の供給と言う面では、多いのに越した事は無いのですが、限度が有ります。 これは、濾過槽の厚みや水の落とし方にも関係が有ります。 水流がキツ過ぎると、ろ材から微生物の膜が剥離しやすくなります。
原則的には曝気も通過水量も多いに越した事はありませんが、やはり限度がありまして、徐々に水量や濾過槽での曝気を増やしていくと、ある量を境に、水の透明度が低下して白っぽくなりますが、それは濾過槽から微生物が流出してくるからです。
(過曝気と言います。) 通水量が多くてもバクテリアやヘドロの滓が飼育槽内に流入するため水槽内が白くなります。

濾過の水の流速を早くしますと、水ミミズも流れてきます。
水ミミズは見た目が悪いと、敬遠されますが、水ミミズは調子の良い濾過槽にも居ます。こいつらはバクテリア自体や形成された汚泥を食べていますので、濾過の役には立っているのですが、塩素の影響や水温・pHの変動でダメージを受けると。ろ材表面の汚泥の中に掴まっている事が出来なくなって、濾過槽から流出してきますので、大量発生しているように見えますが、実は濾過槽の中には当り前のように存在します。
ただ、汚泥を食べるのがスキなので、やはりセッティングして時間が経つほど汚泥も溜まり、水ミミズの量も増えていきます。
水ミミズが流れ出したときは、大量発生したと考えるより濾過槽や水環境に何らかの変化があったと考えたり、濾過槽のお掃除時のお知らせセンサーだと考えると憎たらしさも減ったりして・・・・

第6章)
水槽をセットするときに、水を立ち上げますが、ろ材をセットして、お金のある人は市販の種菌を買って、私のようなお金の無い人は庭の枯葉の溜まった場所や雑木林の腐葉土を濾過槽にコップ一杯分入れるだけで、種菌代わりになります。
でも、病原菌の持ち込みを気にされる人はホームセンターの園芸コーナーの堆肥を作ったりする商品のコーナーに生ゴミ分解促進剤(例/アイリスオーヤマ製・生ゴミ分解菌とか)をコップ1杯くらい入れてもいいです。

種菌も入れたし、水も廻して、ここで一安心。
と言うわけには行かず、一番忘れてしまうのは菌の餌なんです。
水草水槽であれば、肥料や水草の枯れた部分が有るので、イヤッてほど栄養は有るのですが、まっサラなアジア水槽にはホントに栄養となるものが有りませんので、コアカを数匹〜数10匹投入して、毎日餌をやれば、餌の残りやコアカの排泄物でバクテリアは増えていきます。
試しに、2日に1回くらい亜硝酸塩を測定すると面白いのですが、水を廻してコアカを入れてから2週間くらいまでは、グングン亜硝酸は増加していきますが、3週間を過ぎた頃からウソのように数値が下がっていきます。
亜硝酸塩がゼロになった頃、これが「水の出来た」頃です。