寄せ書き
大型水槽設置の注意点

大型水槽を優雅に泳ぐアロワナ達、そんな専用の部屋で、お気に入りのソファーに腰掛け、ゆっくりと時間を過ごしてみたい・・・・それが私の夢でもあります。
みなさんも専用の温室なり、水槽部屋なり、いつかは欲しいと思っておられる方も多いと思います。
すでに、そういった部屋で、鑑賞を満喫されてる方もおられるでしょうが、家族に肩身の狭い思い(?)をしながら、飼育を続けていらっしゃる方も多いのでは無いでしょうか?
 
そう言う私も、築20年以上の家で、しかも、普通の部屋(フローリング貼)に水槽を設置し、飼育しています。家族の顔色うかがいながら、じわじわと範囲を広げて、ひと部屋占領するまでになってます。最近は何も言わなくなったので、あきれられてるのだと思いますが・・・。
 
さて、いざ大型水槽を設置するとなるといろいろと問題点がでてきますね。
 
1,水槽の重量に耐えられる床かどうか。
  (床補強や、方法なども含めて)
 2,水槽設置のスペースのこと。
 3,湿気対策、臭い対策など。
 4,電気の容量
 5,給水・排水や、メンテナンスのこと。
 6,断熱、保温、日当たり

             ・・・・・・・などなど。
まだたくさんの問題が発生するでしょう。
 
私は建築の設計の仕事をしている関係上、たまに、水槽設置などの相談を受けます。
設計と言っても構造屋さん(構造的な計算などを専門にしてる人)ではないので、構造計算などはほとんどしません。ですから、私は「スパン表」(スパンによって材料のサイズなどをあらかじめ求めた表)を使って、構造計画を行っています。
 
水槽を部屋に置く場合、重量に床が耐えるかどうかとよく聞かれるわけですが、木造の住宅の場合、床の荷重強度に関しては、ほとんど計算無しで建てられています。これは床が家の構造強度にはあまり考慮されていないからだと思います。よって、施工業者によって構造や強度にばらつきがあるわけです。ですので一概に強度的に大丈夫だとかの判断は難しいところがあります。
今回は床の強度の事について考えてみたいと思います。
(次回があるわけではありませんが・・。)
 
床の構造のことについて少し説明しておきます。
ここでは、日本の住宅では一番多いと思われる在来軸組工法の木造住宅を例にあげています。
 
床の構造
一般的には、1階の床板(合板・フロアーなど)の下には「根太(ネダ)」と呼ばれる木材が下地に使われています。(通常、1階の根太の断面サイズは45×45mmから45×60mmぐらいです。)その下に「大引」とそれを支える「床つか」と呼ばれるものがあります。「床つか」の下にはコンクリート製などの「束石」と呼ばれるものが地盤の上に置かれて床を支えているわけです。
床下はコンクリートが打ってある場合と、土そのままの場合があります。
通常根太は30センチ間隔ぐらいに「大引」の上に設置されています。そして「根太」が「大引」きによって支えらている間隔の距離を「根太スパン」と言います。
(図参照・・床の構造の参考図)
 
床の構造を考えるとき、床に対する荷重としては固定荷重と積載荷重とがあります。
 
固定荷重とは
畳だとか、フローリング、その下の根太などの下地材の重さ、2階の床では1階の天井も支えているので、梁や、1階の天井材等の重さもこの固定荷重に入ってきます。部屋に何も置かなくても、すでに荷重がかかっていることになります。 
ちなみに、1階の床で1m×1m当たり約500kg(約500N/平方メートル)  、2階の床で約800kg(約800N/平方メートル)の荷重がかかっています。
 
積載荷重とは
人間や家具など、床の上に置く物などが入ります。水槽もここに入る訳です。
 
木造住宅の構造計算を行う上での荷重設定には主に3種類あります。1m×1mにつき、
 積載荷重1(根太、床の小ばり用)1800kg(1800N/平方メートル)
  積載荷重2(床の大ばり、胴差用)1300kg(1300N/平方メートル)
  積載荷重3(たわみ算定時用)   600kg(600N/平方メートル)
 
このような積載荷重に耐えれるように床の強度は計算されています。
反対に言うと、上記の様な荷重までだったら耐える事が可能と言うことになるわけです。
床の荷重の場合、通常積載荷重3のたわみの計算で考えますので、1m×1mに600kgの荷重に耐えることになるわけです。
しかし、実際には床の下の地盤の強さが重要なのです。床を支えている「床つか」の下が沈んでしまっては、いくら強度がある床を作っても意味が無いと言うことになります。
 
計算上、地盤の事を考えなければ、1階においては、根太スパンが1m程度で、根太の断面が45mm×45mmで根太間隔が約30cmおきにあれば、約600kg、同じ条件で根太の断面が45mm×60mmであれば約750kgの積載荷重には耐える計算になります(杉などの無等級材の場合で計算、木の種類により強度が違ってきます。また、根太の上に貼る合板やフローリングなどは考慮していません)
なお、上記の計算はたわみ算定(たわみがスパンの1/250まで耐える荷重)での計算ですので、それ以上に荷重がかかっても、床が落ちるわけではありません。
 
巾180×奥行90×高さ60pの水槽を置く場合、単純計算ですが水を入れると約970kgの重さになります。それに水槽台や濾過槽が仮に300kgあるとします。合計1270kgで計算しますと、この水槽の投影面積(上から見た面積)は1.62平方メートル(1.8×0.9)ですので、1.62平方メートルに約1270kgの荷重がかかっているわけです。
1平方メートル当たりに直すと約780kg(1270÷1.62)の荷重がかかる事になります。すでにオーバーですね。
では高さ45cmの水槽だったらどうでしょう。他の条件は同じとして考えると、1平方メートル当たり630kgの計算になります。根太の断面が60×45mmだったら計算上大丈夫と言うことになります。
 
お宅の根太の大きさはいくらありますか?
根太が小さい場合や、間隔が広い場合は、今の床の上に合板などを敷いて強度アップすることも可能です。
 
床下にコンクリート(出来れば厚み100mm以上)が打ってあり、その上に束石が設置してあれば、地盤が沈む可能性は少ないので、だいたい計算通りになると思いますが、床下が土の場合、地盤の耐力がなく束石が沈むことも考えられます。床下が土の場合は床つかを増設されることをお勧めします。大引と大引の間にもう1本大引を追加し、束石を設置して床つかを施工します。
 
もう一つ重要な事があります。床に対して当分に荷重をかけるということです。
グランドピアノを古い家に置いたとたん床が抜けたと聞いて行ってみると、足の部分だけが穴があいてたと言うこともありました。
荷重を分散させれば十分持つのですが、足を直接床に置いたために、3本の足の部分に荷重が集中してしまった訳です。
水槽台の場合でも。足の部分が根太と根太の丁度真ん中にきてしまうと、やはり、弱くなります。なるべく根太などの下地材の上に直接くるようにします。
荷重を分散させるためには、水槽台の下に、合板などの、板を置くことが必要です。
目安として150センチ水槽以上になると、12ミリ厚の合板を2重以上敷くと良いでしょう。
合板を下に敷く欠点は、水などがこぼれて合板の下に浸みた場合、乾燥がしにくく、板が痛みやすくなってしまう事です。こぼれた場合、すぐにふき取ることが必要です。でも、間違っても、防水などの考えで、合板の下にビニールシートなど敷かないでください。乾燥が妨げられ、床板が余計に腐ってしまいます。一度設置すると動かすのは水を抜かない限りちょっと無理ですから・・。
 
次に床下の補強についてですが、1階の場合、床をはぐってコンクリートを打つと言うことが、長い目で見て一番良いのですが、床の補修なども発生して、費用などの面から言うと高くついてしまいます。

以前、目的は違いますが、洋室8帖の部屋の床をめくり、床下全体にコンクリートを打ち、床を張り直した事がありますが、約35万円かかりました。水槽の場合は、一部分で済むのでしょうが、それでも、結構かかると思います。
そこで、格安の補強材として、床下用の束金物という優れ物があります。
プラスチック製のものから、金属製の物までいろいろあります。(1個600円〜1500円位です。)
 
      (参考写真・・・・床金物の画像)
 
1個で1〜3トンぐらいの荷重に耐えるように作られていますので、適切に使用すれば、かなりの重さに耐えることが出来ます。
少し器用な方(床下にもぐる事の出来る方)なら、自分で取付出来ます。大きなホームセンターや建築金物店にあります。サイズも何種類かあり、水槽設置後でも高さも調整出来ます。ほとんどの住宅(木造・2×4・プレハブ系)で対応出来ます。床下にコンクリート(厚さ100mm位あると良いんですけど)が打ってあれば、そのまま、使用できますし、無ければコンクリートの束石(これもホームセンターにあります)を何とか床下に設置し、その上にこの金物を設置します。
 
取付位置は水槽台の足の真下、又は、水槽台の隅(一番荷重がかかる部分)になるように、また、巾がある場合はたわむのを考慮して、最低でも90センチ以内に最低1ヶ所は設けるようにします。(180p×90p水槽で最低6本必要)
床下が軟弱と思われる場合は、間隔を狭くし、数を増やします。
設置後に水槽に水を入れて、荷重をかけると多少下がりますので、再度、調整することが必要です。

床下へは、最近の住宅には点検口や、床下収納庫から入れるようになっていますが、ない場合は点検口を設置する必要が出てきます。床に穴をあけたくないと言う場合には、押入などのあまり目立たなくて、補修のしやすい部分に設けるほうがいいかもしれません。
この方法を自分でやれば、180センチ水槽程度であれば、1万円もかからずに出来ると思います。
 
2階への、大型水槽設置は少ないかもしれませんが、1階設置に比べ、スパン(床を支える水平距離)が広くなり補強は難しくなります。1階は床下のスペースで、自由に支えが追加出来るので、簡単に補強が可能ですが、2階の場合はその下が部屋などに使われており、補強は天井を撤去して柱から、柱へ鉄骨梁などを入れる等の大がかりな工事が必要になります。他への構造体や、仕上げなどへの影響も大きく、あまりお勧め出来ません。
2階への水槽設置は、通常の住宅でしたら、120×45×45pまでの水槽で我慢していただく方が無難かと思われます。
床に等分荷重がかかるように合板などを敷き、そして、なるべく壁際に設置するか、1階の壁(又は柱)の上になるようにすればより強いはずです。
 
これまでに述べてきたことは、実際には住宅の新旧、施工した業者、構造、地盤の強さ、床材の厚み、床下地材の材質・スパン・サイズ・間隔・・・・・などなどによって異なってきます。
 
とにかく大型水槽設置は床に伝わる荷重を分散する事がポイントになります。
おおまかな目安として、補強無しで置ける水槽は水深45センチまでで、それ以上は補強が必要です。
しかし、補強として水槽台の下に合板を敷いたり、床金物を増設する事で、それ以上の荷重にも耐える事が、さほど費用をかけなくても出来るのも事実です。
 
 
建築物に対しての影響として、水槽設置による湿気の問題も結構あります。
水槽の裏の壁がカビだらけって事もよくあります。これは健康にも悪いですからね。注意が必要です。
湿気対策は、まず水槽外に湿気が出ないように工夫するのが一番です。
蓋は隙間無く、配管や、餌用の穴などはアクリル板やゴム板などで塞ぐようにします。水槽の裏は壁から少しあけるようにします。余裕があれば10センチぐらいあけると、空気の流れが良くなり、カビにくくなります。水がかかるといけないとの理由で、後ろにビニールとかを貼っておられる方もありますが、壁側に貼ってしまうと最悪です。壁は必ずカビだらけになります。
貼る場合は、水槽側に貼って、壁側は少しあけるようにすると良いです。。
 
まだまだ、たくさんの問題が発生すると思いますが、今回はこの辺で・・・。
適切な大型水槽設置で、すばらしいアクアな生活を満喫して欲しいと思います。

龍仙人の龍魚伝説・管理人・龍仙人
うーん、さすが一級建築士! しかも、仙人さんの場合、電気系の学校を出られた後、建築の世界に入られたわけでして、まさにマルチなお方。
一般家庭において、自分の家にどれくらいの水槽が置けるのか? 状況さえ許せば、より大きな水槽を置きたくなりますよね?
今回はプロのご意見として、仙人さんに設計のアドバイスをして頂きました。
現在の水槽環境の見直しや、今後、家を改造・新築されるとき、最寄の工務店と相談するときの参考データとして御利用ください。

また、いずれこの寄せ書きでも第2段を寄稿して頂く事となる事でしょうが、現在、新築や増改築をご検討されていて、自分が付き合っている工務店以外の意見をお聞きになりたい方は龍仙人さんのwebsiteにてお尋ねください。 但し、仙人さんもご多忙な方ですから、時間的余裕を持ってお尋ねされる事をお勧めします。

忙しい仕事の合間を縫って、わざわざ、このために画像まで添付して、寄せ書きを寄稿頂いた龍仙人さんに心より感謝致します。

管理人・きらりきら