寄せ書き
アジアアロワナの展示水槽

水族園の役割には、レクリエーションの場の提供、教育普及、調査研究、自然保護(種の保存)があります。私の仕事も飼育業務以外に特別展の企画や、展示解説版の作成・機関誌・飼育事例報告などの原稿執筆、種の保存のための繁殖やその情報発信、レクチャーなどがあります。私が飼育を担当している水槽は、アロワナ類以外に、日本産希少淡水魚、特別展水槽などの他、ラッコやピラルクも一部分担しています。 

現在のアジアアロワナ展示水槽や、飼育については以下のとおりです。

1 繁殖
アジアアロワナの繁殖は1993年と1995年に成功しましたが、現在は繁殖用の水槽がなくなったため、展示だけを行なっています。

2 展示水槽
当園は建物が分散している公園のような水族館ですが、アジアアロワナ展示水槽は、「森の水槽南館」という1977年にできた、園内では最も古い建物にあります。この水槽は、以前はピラルクを展示していたもので、間口8m、奥行き5m、水深1.5m、隣接する予備水槽も合わせると水量約70立米になります。

3 飼育水
この水槽では以前、水道水を飼育水に使っていたのですが、pH変化に対する緩衝効果が小さいため、硝酸蓄積によってpH4.5くらいまで下がることがありました。そうなるとピラルクやアジアアロワナの調子が悪くなるので、途中から緩衝効果が大きい井戸水を使用することで改善しました。現在、pH8前後で安定しています。

4 ろ過
ろ過は、人のプール用密閉式ろ過機が一基ですが、ろ化速度が速い(32m/h)のが特徴です。ろ材は砂です。飼育魚はアロワナ類が30尾ほどですが、このろ過システムで特に問題はありません。

5 飼育にあたって注意している点
・餌の回数・量は、食べ残しが出ない程度です。水槽容量や魚の量など飼育条件で異なると思いますので、魚の様子を観察しながら決めるのが良いと考えられます。

・病気には特に気をつけています。キンギョを与えると病気が感染することがあるので、餌は冷凍アジを解凍し、調餌して与えています。

・キンギョを与えるとイカリムシやウオジラミが発生することがありますが、ご存知のとおりトリクロルホンを含む魚病薬は使えません。節足動物の脱皮を抑制する薬を使用する場合もあります。他にも、アロワナが餌としないほど小さな魚(ゼブラダニオの稚魚など)を同居させて、寄生虫の遊泳期の幼生を食べさせる方法も使っています。

6 その他
アジアアロワナの繁殖に取り組んでいた際に、現地調査についても考える必要があり、魚類生態調査の方法について調べたのですが、短期間では科学的な調査はできそうもないことが分かったのであきらめました。かわりに、近くのフィールドに出てみました。すると、多くの日本産淡水魚が絶滅の危機にあることをまさに実感しました。例えば、私が以前知っていたカワバタモロコが生息していた溜池は、現在はどこもブラックバスとブルーギルばかりで、カワバタモロコが残っている池はほとんどありません。メダカやホトケドジョウなど水路のコンクリート化で減少している魚もいます。このような現状は、一般の方には知られていないことが多いようです。アジアアロワナの繁殖も元々は絶滅の危機にある淡水魚を繁殖させるということで実施されたのですが、当園の地元にもそのような淡水魚がいることがわかり、以前に調べた方法を参考にカワバタモロコの調査にとりかかったところです。

魚の飼育が好きな方は生き物や自然が好きな方が多いと思いますが、自然界の淡水魚の現状にも目を向けていてほしいと思います。



須磨海浜水族園・学芸展示部主幹学芸員
学芸員さん、今回は当サイトに寄せ書きと言う形で日頃管理しておられる展示水槽に付いて詳しくご説明頂き、誠に有難うございました。 日頃、私たちアクアリストは他の趣味の人たちより水族館に足を運ぶ機会も多く、そして漫然と水槽を眺めるのではなく、やはり同じ趣味のものとして多大なる好奇心と興味を持って各水槽を眺めるのですが、個人レベルでは出来ない規模への憧れや、このようなお仕事に就かれる係りの方への羨望も交えて水槽を眺めているわけです。
しかし、最近はこの古代魚飼育も大型水槽により混泳や繁殖を試みるマニアも年々増加し、やはり常日頃、大型水槽の管理に携わる方たちの経験に基づいたお話を聞きたいと思っているのですが、実際のところ、水族館での係りの方や学芸員さん達と一般客が触れ合う機会と言うのは、そうそう有るものでも有りませんので、こうやって寄稿頂く事で感謝と共に、より水族館への親近感が湧いてきました。
寄稿に当たってはお忙しい中、文章の推敲までお願いし、大変御無理申し上げましたが、またこれで一層、アクアリスト達の足は各地の水族館へ向けられることと思います。

また、毎月1回ペースでフィールド調査を継続しているとお話されていましたが、そう言った身近な問題の啓蒙活動についても、今後、いろいろとアドバイスを頂ければ幸いです。

有難うございました。 当サイトに訪れるマニア一同を代表してお礼申し上げます。

管理人・きらりきら