アジアアロワナ勉強部屋
目に見えないろ過バクテリアをイメージする
これから書くことは,あくまでもわたしの少ない経験の中で感じたことを主観で述べますし,曖昧な表現だと誤解を招くかと思いますので,あえて,数値を明記していますが,これは絶対値ではありませんので,これ以外の数値であっても全く問題ないことを御理解ください。
1.バクテリアについて考える

バクテリアに関する話は、ハードなお話にも触れていますので、ソチラも御覧頂くとして。

熱帯魚飼育のろ過の仕事には、粗ゴミ取りの役目の物理ろ過と、バクテリアによる有機物分解の生物ろ過の2種類に大別されます。
生物ろ過とは、言うまでも無く、ろ材に付着したバクテリアにより魚に与えた餌の残りや、排泄物をろ過装置で分解することなのですが、バクテリアと言う目に見えない存在について少し纏めます。

まず。ろ過を立ち上げるときに『バクテリアの素』なるものを入れる場合があります。
このバクテリアの素が必要か否かについて述べますと、ある意味必要であり、ある意味不要であると言う答えになります。

私たちの生活を取り巻く、あらゆる環境において、何万種もの微生物が当り前に存在し、様々な活動をしているわけで、大気中にも多数漂っていますし、水道水にしても飲用規準として1ml中に100個以下と言う規準が定められていると言うことは、言葉を帰せば、水道水はなにも菌がゼロであることは必須ではなく、居ても人体に影響がないということを意味しています。

つまり、それだけ生物は微生物に対して耐性があり、切っては切れない密接な関係があると言えるわけで、熱帯魚飼育をスタートするに当って、新品の水槽と、新品のろ過装置、新品のろ材、そして水道水を入れて水を循環させていれば、時間は掛るものの、バクテリアの素を入れなくても器具類に付着している微生物や、空気中に拡散している微生物が飼育水に飛来して増殖していきますのでろ過と言うものは出来あがります。
もちろん、パイロットフィッシュを入れれば、パイロットフィッシュの体内に含まれる微生物、糞に含まれる微生物、ショップから持ちかえった袋の中の水に含まれる微生物がろ材に定着して、時間の経過と共にろ過は立ちあがります。

しかし、それら自然発生的なろ過の立ち上げは、微生物の各飼育水への適応性やバクテリア総数の不足などにより、当分の間ろ過が不十分なまま、飼育を続けていくことになります。
そんな時にバクテリアの素を投入すれば、1g中に含まれる膨大なバクテリアのうち各飼育水に適したものが優先菌として増殖して短時間でろ過を立ち上げることが出来ますので、短期間にメインフィッシュを泳がせたい方には便利なアイテムであると言えるわけです。

しかし、農薬などの心配のない雑木林の枯葉が堆積して出来た腐葉土などでも有用なバクテリアは多数含まれていますので、それらによる代用も可能です。
もちろん、雑菌や病原菌の心配も懸念されますが、バクテリアの世界は都合よく出来ているもので、病原菌などはバクテリアの世界では競争に弱い種であり、多くは他の微生物に駆逐され、なかなか繁殖することは出来ません。(だからこそ、生物は簡単に病気にならず生活できるわけですから)

これらのろ過のバクテリアは、単にバクテリアの素を入れただけでは増えないことを理解しておく必要があります。

多くのろ過用の微生物の繁殖に必要な諸条件について纏めますと、『温度・pH・酸素・栄養』の4つが特に大きく関ってきます。

温度については、熱帯魚の場合、水温が高い低いで魚が元気になったり調子を崩したりするのはお判りでしょうが、大体繁殖に必要な条件としては15-35℃の範囲内にて温度が高いほど、微生物の活性が上がります。
微生物の繁殖や寿命は数分単位から数時間単位の種が大半であり、温度が高いほど幾何級数的に代替わりや繁殖のスピードは加速されます。
このとき、温度は高ければよいかと言うとそうでもなく、肝心なのは『熱帯魚に適した水温に対応する微生物を育てる』ことです。
微生物にはそれぞれ最適な活動温度が種別にありまして、5℃とか低温が適している種もいれば、40℃が最適の種もいるわけです。
龍魚を飼育する場合で言えば、25-30℃の範囲内で活性の上がる微生物が自然に優先菌になるわけで、この主役たちを上手に育てるには、出来るだけこの優先菌にダメージを与えない為にも、水換えなどにより温度変化を与えない配慮が必要になることを御理解ください。

次にpHですが、もともとpHが様々な要因により数値が決定することは過去にも述べましたが、これも『熱帯魚に適したpHに対応する微生物を育てる』ことを念頭にろ過を考えていく必要があります。

例えば、食品を長期貯蔵する手法の一つとして『酢漬け』という加工方法がありますが、あれは酢酸により食品を低pHにすることで微生物の繁殖スピードを抑制することが可能になるからで、言いかえれば低pHはろ過バクテリアにとっても活性の上がる条件ではないのです。

前項で龍魚に適した水質にも述べましたが、ろ過バクテリアに適したpHは5.3-8.5位が実用範囲であり、ろ過を順調にキープするには、この範囲を外れてはならず、また、バクテリアは非常に脆い生物ですので、いきなりpHが大きく変動するような水換えを行えば、それだけで活性が低下してしまい、別の有害菌などがライバルの元気がない隙に増殖して魚を病気にさせたりしますので注意が必要です。

エロモナスやカラムナリスなどの病原菌はろ過バクテリアの中に細々と生息しているわけですが、優先菌が弱った隙に頭を抑えるものが居なくなり繁殖するわけで、バクテリアがダメージを受けるのと同様、魚も体調を崩して菌の侵入や付着を許すから発病するわけで、pHの安定は、魚の病気予防においても重要な項目と言えます。

最後の『栄養分』ですが、これは硬度成分などの無機物も栄養に含まれますが、基本的にはタンパク質やアミノ酸などの有機物が栄養であり、バクテリアたちは魚の排泄物や残餌に含まれる栄養を摂取して増殖していきます。
このあたりについては、ハードなお話も併せて読んでください。
バクテリアたちは残餌や排泄物をそのままの形で体内の栄養にすることは出来ませんので、各々が有機物を分解する酵素を出し、有機物を自分たちが食べやすい形になるように低分子化させていきます。

その過程が良く言われる窒素の分解形態であるアンモニア性窒素→亜硝酸性窒素→硝酸性窒素という変化なのですが、これらは科学的に見れば『酸化分解』ですので、バクテリアが栄養分として分解する際に酸素を必要とするわけです。
(したがって、バクテリアの活動において酸素補給は不可欠であり、濾過槽へのエアレーションが重要なのも御理解いただけるかと思います。)

バクテリアたちは、栄養を摂取し、子孫を残して代替わりしていき増殖するわけですが、増殖活動について栄養が必要なわけですので、栄養の量により、自然とバクテリアの量も決定します。

つまり、毎日与える餌の量や魚の匹数などにより、増殖可能な微生物の量は決定されるわけで、例えば、1800*900*600Hの水槽で60cmの龍魚を10匹飼育していたとすれば、それに応じたバクテリアの量が仕事をしています。
そのうち、何かの理由で、同じ水槽で龍魚を単独飼育に減らしたとすると、龍魚1匹に与える餌の量は、当然10匹飼育していたときより大幅に減りますし、龍魚1匹が出す排泄物の量も減りますので、10匹分に対応していたバクテリアの大半は栄養が不足して餓死していき、1匹飼育により発生する栄養分の量に対応しただけのバクテリアの量に落着くことになります。

逆も同様で、同じ水槽でも魚が大きく成長したり、飼育尾数が増えれば、それに応じただけの微生物が増加することを常にイメージしてください。

何を言いたいかと言いますと、このようにバクテリアの量は飼育する魚の大きさや数=餌の量や排泄物の量に決定するものであり、過剰にバクテリアの素を入れても必要なだけのバクテリアしか育ちませんし、バクテリアの量を増やしたくても、それに応じただけの栄養が無ければ増えないと言う当り前の事実があるのです。
水槽立ち上げ時に、パイロットフィッシュを入れずに何日も水槽を稼働させても、肝心の栄養が無ければ水槽は立ちあがりません。
バクテリアを増やすには、それに応じた栄養の量が必要となるのです。
2.ろ材の必要性

上記の様に、バクテリアの数を増やす場合、バクテリアの住処としてろ材を確保する必要があります。
ろ材の量が適量である場合、各ろ材の表面に平均化してバクテリアたちは住みつきます。
バクテリアが栄養を摂取する際に自らの体をろ材に固定する為、また、捕まえた餌を逃げないようにするためネバネバのゼリー物質を形成しますが、これが一般に濾過槽にある焦げ茶色のヘドロであるわけです。
これは排水処理の世界では活性汚泥と呼ばれ、余分なものは余剰汚泥とも言われているものです。

上記に述べたように、バクテリアは栄養の量により全体の数が決定しますので、厳密に言えば、ろ材の量に関係なく決定されます。
つまり、ろ材が少なくてもバクテリアは栄養の量に応じて増加するものなのです。

しかし、ろ材が少ない場合どうなるかと言えば、ろ材表面に多量のヘドロを形成し、そのヘドロは層が厚くなり、やがて濾過槽内の水流により押し流されて濾過槽から飼育槽へ流出していきます。
そうなると水槽内が白濁して見えたり美観を損ねますし、水の透明度が低下します。
また重要なのは、このヘドロはバクテリアの住処でもあり、分解途中の有機物を大量に保持していますので、これらが飼育槽に流されて分断されて漂うようになると言うことは、ヘドロに含まれる大量の有機物が飼育水に分散することになり硝酸塩濃度や亜硝酸塩濃度は増大することになりますので魚へも有害になります。

濾過槽とは、バクテリアを固定させて、そのバクテリアの分解過程であるヘドロを保持させることで、飼育水に有機物などが流出しないように分離する役目もあるわけです。

ろ材を掃除したりしてヘドロが飼育水に流れ込んだり、飼育水の底床を清掃する際にヘドロを舞いあがらせると、魚が調子を崩したり、ポップアイや腹水病になるのは、上のような状況で、水中の有機物濃度が上昇し、魚の抵抗力が低下するのと、バクテリアの中に潜んでいる病原菌が魚と接触しやすい状況になるからだとイメージしていただきたいものです。

ろ材が少なくてもバクテリアの量は変らないと書きましたが、ろ材の量が適当でないと、上のような問題が発生するためろ材は十分に濾過槽に確保する必要があるのです。
また、ろ材の量が足りないのに、どんどんヘドロが形成されていけば、ろ材の間はヘドロで埋り、水が流れなくなり、水が運んできてくれる溶存酸素も欠乏してしまうと、一般に言われるろ過バクテリアは酸素があって活動していける生物であるため酸欠で死滅して、それらの死骸を餌に嫌気性バクテリアが発生し、その活動の際に発する代謝物質である硫化水素を発生させてヘドロを黒く変化させ、と同時にpHを低下させます。
また、メチルメルカプタンも生成するため、これも魚にとって有害です。(一般に言うところの腐敗)

3.水換えの必要性

今まで述べたバクテリアの話は、いわゆる好気性バクテリアによる活動について纏めたもので、これらの有機物の最終形態は窒素に例えれば硝酸性窒素までであり、これより先には分解は進行しませんので、徐々に硝酸性窒素濃度は蓄積していき、やがて魚へ有害な濃度に到達してしまい、拒食→エラメクレ→頭部穴明きや鰭溶けなど、トラブルの原因となりますので、硝酸塩の希釈の意味で、『水換え』が必要となります。

もちろん、蓄積した硝酸塩を硝化させて窒素ガスに還元して大気開放させることも可能なのですが、これは嫌気性バクテリアの仕事であり、嫌気のコントロールや分解に必要な炭素と窒素のバランスとしての炭素源の補給など、コントロールがなかなか難しく、そのような嫌気性バクテリアを育てて窒素還元させるグッズもありますが、なかなか一般化しないのは、そのあたりのコントロールが困難であることを意味します。
と、同時に硝酸塩の除去として水換えが簡単であることも言えるからでしょうが。

ただ。濾過槽でろ材を200リットル以上も使用すれば、狙わずとも嫌気エリアと言うものは自然と出来ますので、嫌気性バクテリアの共存も可能となり、好気性バクテリアにより形成されるヘドロは、嫌気性バクテリアに分解されていきますので、計算よりもはるかにヘドロの蓄積が少ないことは実際に大型設備を稼働していけば実感していただけることと思います。
4.物理ろ過の重要性

今まで生物ろ過について纏めましたが、粗ゴミを除去する物理ろ過も大変重要であり、大きな残餌などは生物濾過槽に入るまでに予め除去しておくことが大切です。

これはなぜかと言うと排水処理の世界では流入する固形分の約70%が生物分解されないヘドロに廻ると言われるからで、固形分が濾過槽に入るほど、大量のヘドロを形成することとなり、ろ材の目詰まりを早めますし、バクテリアで処理する有機物量を増加させると言うことは、バクテリアの分解の仕事の負担を増やすことになるのでそれを軽減する意味で、物理ろ過を設ける必要があるのです。

物理ろ過とは上部ろ過で言うところの最上部のスポンジマットやウールマットの部分であり、水没させてはいけません。
つまり、ドライろ過である必要があります。
水没させてしまうと、せっかく分離した固形分は、やがて水中のバクテリアにより分解されて溶け出し、マット上の固形分はいつまで経っても増えない代りに生物処理槽でのろ過バクテリアに有機物として仕事の負担を増やすことになり、結果的にヘドロの形成を増加させることになります。

最終的に、残餌や糞などは固形分の形で廃棄するか、ヘドロの形で間引きするかのいずれかになりますが、小規模なろ過においてはヘドロを形成させると固形分としてのボリュームの数10倍のヘドロの形勢となってしまうため(ヘドロの99%が水であるため)、結果的に固形分で取る方が掃除の手間としては楽であるからです。

三層式の濾過槽も一番最初のウール層は水没させた状態だと、ここが一番有機物の負荷が高く、分離した固形分もこの槽で溶けてしまうと指摘しつづけましたが、最近は熱心な水槽メーカーではウェットろ過槽の上に専用のウールボックスを設置して粗ゴミを別途に除去することが可能なドライろ過も併設するように変化してきて、好ましい状況になってきたと言えます。

ろ過槽のメンテナンスが面倒であり、嫌いな人ほど、この物理ろ過に力を入れて、マメにゴミ取りをしたりマット交換をされることが結果的に、ウェットろ過のメンテ期間を大幅に延長させることになることを御理解ください。
まさに『急がば回れ』ですね。

いろいろとろ過バクテリアをイメージしていただくために書きましたが、具体的なろ過の方法については、ハードなお話をご参考いただくとして、機会があれば、また龍魚用のろ過装置ということで、この点については纏めさせて頂きます。

2006,4,16